Project of HIPPO 2011【後編】
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【前編】カバが日本に来るまで

検疫期間中の世話は業者に委託していましたが、業者の方もカバを管理したことがないということで、体調について定期的に連絡をもらい、エサの種類や環境について事細かに指示を出し、とにかく健康状態を崩さないような管理をお願いしていました。

開放予定日が7月19日。
なんとしても元気な状態でカバを宇都宮動物園に連れて行かなければなりません。
予定通りに検疫を終了し、カバを出せると誰もが思って疑いませんでしたが、通常ではあり得ない、実に馬鹿げているが大きな問題が発生しました。

カバはもう日本にいて、心待ちにしてくれている動物園の方々に引き渡すだけだというのに、なぜこのようなことが起こったのか。
私たちの輸入が根底から覆るほどの重大な問題を起こした業者に、私は憤りを隠せませんでした。
しかしここまで来て、カバも日本にいて、諦めるわけにはいきませんでした。
プールもなく、狭い検疫施設にいつまでもカバを入れておくわけにはいかない。
問題を起こした業者と、関係省庁、検疫所と毎日のように話し合いを行いました。

そしてその結果、私たちは前代未聞の大きな問題をクリアし、8月2日無事にカバを検疫所から出すことに成功しました。

2011年8月2日

朝から快晴。
動物園の方々も、私たちも、待ちに待った日がやってきました。
気温はカバが到着した日よりも低く、絶好の移動日和。
前日までに移動のための手続きを全て済ませ、輸送用のトラックも手配し万全の状態。
さらに動物を扱うプロフェッショナル、パンク町田氏に同行を依頼しました。

当社スタッフと輸送用トラックが検疫施設内に入り、トラックへの積み込みを行います。
朝早くから密着取材のTV局や、雑誌社がスタンバイし、磯子の検疫施設の外でカバが出てくるのを今か今かと待ち侘びていました。

そしていよいよその瞬間がやってきました。
2台のトラックがそれぞれにカバを乗せ、ゆっくりと検疫施設の中から出てきます。
しかし感動に浸っている暇はありません。
出てきたトラックの荷台に乗り、まずパンク町田氏がカバたちに声をかけ、状態を確認。
搬入時同様、興奮はしているものの健康状態は問題がないようです。
出発前にカバたちにたっぷりと水をかけ、動物園の方々と、子供たちが待つ宇都宮に向けて、いざ出発です。

大きな渋滞につかまる事もなく、高速を安全に、軽快に進んでいきます。
途中のパーキングエリアで一度休憩し、その際にもたっぷりと水をかけます。
ここまで来れば、あと一歩。
宇都宮インターを降りる際に、荒井園長に連絡を入れました。
園の方はすでに万全の体制で待っているとのこと。

動物園に到着すると、荒井園長が入り口で待っていて下さいました。
裏口からトラックを入れ、私たちは歩いてカバ舎まで向かいます。
カバ舎の前に到着すると、すでにたくさんの子供たちが目を輝かせてカバの到着を待っていました。
トラックがカバ舎のそばまで入るのに危険が伴うかもしれないということで、子供たちの安全に配慮し、動物園の方々がロープを張りました。

カバ舎の事前の確認で、輸送箱をカバ舎に移すためにはクレーンが必要ということで、用意したクレーン車もカバ舎の前で待機し、準備万端。
そこへ裏口から回ってきたトラックが到着。
あとはカバを安全にカバ舎に移す作業のみです。
トラックをカバ舎の柵ギリギリまで寄せ、ワイヤーをかけ、ゆっくりとクレーンで吊り上げます。
空中に浮いたカバをみて、子供たちがざわめきます。
そしてカバが入った輸送箱は、パンク町田氏の誘導でカバ舎の中に静かに降りました。

宇都宮動物園のカバ舎は、プールと陸場、そして寝小屋となるバックヤードがあります。
到着してすぐのカバのストレスを考慮し、バックヤードにカバを移すことになりました。
バックヤードの扉の前に輸送箱を置き、輸送箱の扉を開く。
そして、輸送箱の上にパンク町田氏が乗り、上部から鉄柵を1本1本抜いていきます。
全ての鉄柵を抜き取ったあと少し待つと、周囲を気にしながらもカバが前足を出しました。
そしてゆっくりとバックヤードの方に自分で歩き入っていきます。
カバがバックヤードに入ると、自然と拍手が起こりました。

バックヤードに回って、カバの様子を確認しましたが、すぐにエサも食べてくれたので一安心。
私自身、何より嬉しかったのは、その場に居合わせた荒井園長や、動物園の方々の嬉々とした表情と、無事にカバが来たことへの安堵感を肌で感じられたことでした。

こうして宇都宮動物園に無事カバを納品し、Hippo Project 2011は幕を閉じました。
荒井園長を初めとする、動物園の方々の愛情を一身に受け、ワタル君に次いで…いや、ワタル君に勝るとも劣らない、動物園の立派なマスコットとなってたくさんの人に愛され、活躍してくれることでしょう。

最後に。
現地の方、航空会社の方、関係省庁の方、メディアの方、その他今回のプロジェクトに関わって下さったたくさんの方々に、この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。
関わって下さった方々の誰か一人でも抜けていたら、このプロジェクトは成功しなかったでしょう。
そして何より、私たちを信じて輸入の依頼をして下さった宇都宮動物園の荒井園長に心よりお礼を申し上げたいと思います。